勿体ぶる意味もないと思うので、シナリオ(きちんと脚本にしたもの)(ト書きや文体は、世界最高峰の方の手法を真似てみました)を、途中まで出してみます。
ストーリーは:第1話の、マンガに描いたやつをベースに、内容を膨らませてみた。
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【サブタイトル:Teenager’s Dream and Heroic Ideal】
【シーン01:冒頭】
宇宙空間。
カメラ(劇中カメラ、を意味する)が、作業中の数人の宇宙飛行士を捉える。
一人が手を振り、カメラは人工衛星に移る。
ナレーション:
「世界暦3121年」
「――続きまして、パーソナリティ・タカフミ・アカシア
サテライトチャンネルFAR EASTがお送りしています」
『いやぁ、独身生活の話しかないわー 誰か聞きたい? いやおもろいねんけど、
オレ昨日な! サワラの粕漬けやってん! え? 晩御飯に決まっとるやろ!
すごいやろ、天然ものちゅうて! 近所の魚屋に出てて、思わず買ってもてな――』
喋りにかぶせるように、カメラが地上にパンしていく。
ナレーション:
「極東《FAR EAST》地区――」
肥沃な土地。麦畑が青々と広がっている。電化された鉄道が敷かれ、洗練されたデザインながらのどかな車両が、タタン、タタンと音を立てながら走っていく。
駅名に「旭町」と書かれた古いペンキが剥げ、「East Soliel Town」と表記されている。
ちらほら見える家々には、パラボラアンテナ。ネットワーク通信を受信している。
海沿いの街。
麦畑の一本道を走る、ロードバイク。よく見るとママチャリを改造しただけとわかる。
黒髪の少年がスマートフォンで通話しながらロードバイク(ママチャリ)を漕いでいる。視線の先には開けた海辺の岸壁。荷台には、大きなリュック。どこか面倒そうな顔で電話相手に返事をしている。
「だからー、行かないって昨日も言ったじゃん」
「お前なぁ! 研究手伝えって、そんなに嫌か!?」
「いやだって、ぼく卒業しただろー これからは絵を描くんだって、院試も辞退したけど」
「お前! 大物理学者・ラマヌジャン様の素粒子モデルの論文だぞ! ネイチャーに載れるぞ!!」
「今チャリ乗ってるから! もう切っていいー?」
「ノゾムよ……誰よりもデキる生徒の成績表にオールAつけながら……あーでもこいつは研究室残ってくれないんだな、と思う……俺の気持ちを……お前は……」
「しつこいよ! ぼくは――」
「武闘家《アーティスト》になるんだって! 言ってるだろ!」
ノゾムの自転車の前カゴでガチャガチャと揺れている、機械のような道具のようなもの。
『デバイス』。アーティスト、つまり「作品をつくることで戦う武闘家」が持つもの。表現者としての武器。
「だから、今から師匠んとこ行くし! 切るよ」
「あのな、俺は大人だから言うぞ! そんなもんが、なんに――」
通話を切って、ノゾムの心の中には、あの日の光景が浮かぶ。
ジュニアアーツファイト東アジア選手権大会。見事優勝して、栄冠を手にした。
(ちゃんと結果も出してるんだ)
言葉にしない自負を胸に、大好きな「師匠」のもとへ自転車を走らせる。
眼下の海では、ウミネコたちが鳴きわめきながら羽ばたいている。春の、強い潮の匂い。何台もの大きな風力発電機が、ゆっくりと回っている。
【シーン02:師匠の道場へ】
海の前で回り込み、街の方に向かう。メインストリートを突っ切った向こう、飛空艇の発着ポートを兼ね備えた大きな土地がある。その端に位置する、平屋の伝統家屋が師匠の道場だ。
気が逸っていたノゾムの前に、一人の若い女性の姿が飛び込んだ。曲がり切れずに突っ込みかける。
「わあっ!」「きゃ……」
ぶつからずに済んだ。だが、女性が持っていたエコバッグから、オレンジやアボカドが転がり落ちた。
「ごめん! シヅルさん!」
ノゾムは急いで自転車を降りて、停車させる。描き文字「※ちゃんと路肩に停めるタイプ」
シヅルは慌てたふうもなく、果物を集めていた。ノゾムも手伝う。
「急いでたんだ。これから師匠んとこでさ……」
「のんちゃん、いつもせっかちですよ。もう少し注意深くなった方が」
シヅルの注意に、ノゾムは食い気味に訂正を入れる。
「のんちゃん、はヤメテ。ぼく、もう14歳だよ」
「失礼しました、ノゾムさん」
軽く笑いをかみ殺しながら、シヅルが応える。少し歳の差があるが、親子や姉弟ではなさそうだ。親しそうに見える二人である。
「でもノゾムさん、リョウさんは、今日……え? 今からですか? ……いえ、なんでも……」
「バレてないと思った? 今日こそ連れて行ってもらうんだ」
今度は慌てるシヅル。師匠(リョウ)の秘書である自分のスケジュール管理に不備があったのかと。
「どうしていつも察してしまうんです!? 秘匿回線ですよ!」
ノゾムは最後のオレンジをエコバッグに押し込みながら、平然と言う。
「エンドツーエンド暗号だろ? ネットワーク内に量子もつれ作ったら、ちょちょいのちょい」
「えっ……」「あ、師匠には内緒な」
自転車に乗り直して、走り出すノゾム。シヅルが止めようとするが、特製ロードバイク風ママチャリの機動力が勝った。
「またね! 功績上げたら、表彰よろしく!」
「ノゾムさーん! 怒られるの私なんですよー!」シヅルが後ろから叫んでいる。
毎度、武闘家《アーティスト》として戦争に赴く「師匠」リョウに、ノゾムが「連れていけ」と迫る。お決まりのやり取りだった。
【シーン03:道場にて】
道場のそばには、門下生たちが生活する寮もある。丸い屋根と中二階の玄関の小さな建物は、リョウが秘書シヅルと住んでいるデザインハウスだ。
街の外れの、緑が濃い場所である。実はノゾムの自宅はその裏手なのだが、自転車が通れないのでわざわざ大回りをしてきたのだ。
リョウは、自宅の庭で軍用無線のチューニングをしていた。風格ある渋い雰囲気の中年男性。
ノゾムの気配を察知して、苦々しく呟く。
「来たかアホガキ……」整った顔の眉間に、大きな皺が寄る。
直後、キキーッとブレーキの音。ノゾムの自転車が、庭に突っ込んできた。大荷物を荷台からおろして背負い、鼻息も荒くリョウに詰め寄るノゾム。
「今日こそ連れてけ!」
リョウはしばし黙る。前のめりで見つめるノゾムと相対している。そして、冷静に指摘した。
「まずツッコむが、飛空艇乗ったらそのゲーム使えない。どこでもWi-Fiあると思うな」
ノゾムの荷物からはみ出している携帯ゲーム機を指してのことである。ノゾムは我に返ったようにゲームに目をやる。
「あ、そうなの?」
ため息をつくリョウ。そしていつものセリフを言う。
「ガキは留守番に決まってる。戦争だぞ?」
そこに、シヅルが追いついて帰ってきた。走ってきたのかもしれない。息を切らせている。
「ただいまー リョウさーん」
リョウは状況を察しているのだろう、コミカルにプンプンしながらシヅルに言う。
「シヅ! 見てたんなら止めろよ! 秘書だろ!」
シヅルはすみません、と軽く申し訳なさそうな会釈をするが、荷物を抱え直しながら向き直って、会話に参加する。
「のんちゃ……ノゾムさんは、リョウさんの門下生の中でも一番若いのに。ずいぶん気概も根性もあるじゃないですか」
「そうだ! もっと言ってシヅルさん!」
「コイツ、別に俺の部下でも何でもないだろう……ただのガキンチョだろ」
「そうですけど」
「シヅルさんも、留守番の子供じゃなくて、ちゃんと責任もって戦うぼくの方が、カッコいいって思うんだよね!」
図に乗ったノゾムだが、シヅルは真面目な表情で見つめている。
「私はノゾムさんが、戦場に出るべきなんて一言も言ってませんよ」
「ん?」
「大人が子供を守るのなんて当たり前です。それじゃあ私はお食事の支度がありますから、あとは男同士でどうぞ」
パタパタと、サンダル履きのシヅルが足音を響かせながら、リョウの自宅に消える。
場が静まり返る。歴戦の戦士であるリョウと、まだ幼い弟子のノゾムが、黙って顔を見合わせる。
「……連れてけよ」
膨れっ面で呟くノゾム。大柄なリョウを上目遣いで睨んでいる。
「まだ言うか」
この会話をするのは何十回目だろうか。
「師匠もさ。ぼくの助けがあれば、有難いんじゃないの?」
リョウが真顔で呆れる。ノゾムは自転車のカゴから自分の武器《デバイス》を取り、構えながら呟く。
「フィジックス特化型ハイエンドモデルを操る……若きエース……」
「自分で言うのか」リョウのツッコミ。
だがノゾムは本気で言っているらしい。その馬鹿げた主張を続けている。
「ぼくは真面目に言ってるんだけど? こないだの大会でさ……」
「8代チャンピオンなっただろ! なんで認めてくれないんだよ」
ノゾムの自負も、認められたい気持ちもわかっているリョウなので、黙って聞いているが、
「ぼくも、師匠みたいに強くなりたいし……たくさんの人を助けたいし……」
その勘違いじみた物言いに、リョウは静かな怒りがこみあげてくるのを感じた。
「ぼくだって戦士だ! アーティストなんだ!」
強気な表情で、「師匠」リョウを見上げるノゾム。そして断言するように啖呵を切った。
「気持ちだって師匠に負けてない!!」
その言葉にリョウは、ぷちんと何かが切れるのを感じる。
「言ったな?」
鋭い殺気をまとわせるリョウに、ノゾムは怯んだ。このオーラをまとったリョウの姿はあまり頻繁に現れない。
常に寡黙で、自信ある話し方も、目下の者への気配りも崩さないリョウが、この表情を見せることは少ない。
「そこまで言うならかかってこい。俺とタイマンしろって意味だ」
「おまえがどれだけザコか思い知らせてやる。本気でぶっ飛ばすぞ」