『雨の日の心理学』東畑開人著、2024年(Amazonのリンクはこちら)
臨床心理士の東畑先生が書いた、一般向けの「心のケア」の本です。
心のケアというと、多少、よく聞く概念だなと思われそうです。
「がんばらない」とか、「あなたはあなたのままでいい」とか、そういう感じの。
それとは違って、もっと専門知に基づいた話です。専門用語もかなり出てきます。
主に、傷を負った心のケアについて書いてあって、それが「雨の日」というタイトルの意味でした。
生活上で関わる相手が、心に傷を負っていると、関わりや接し方の中で、こちらまでしんどくなることが多い。
それを、双方がどうマネジメントしていくか? というのが、本で語られる内容でした。
実践的な話が多いです。私は、どちらかという議論をするまでもなく、ケアをされる側にあたる人間なので、セルフケアという意味で役に立つことが多いと感じました。
また、自分の家族の気持ちも、ある程度わかるようになりました。
(家族も読んでくれて、参考になる部分があったようです)
まず、大前提として、「心に雨が降っているとき=しんどい、傷を負っているとき」には、ひとは通常の状態ではない。極端に表現すると、異常な状態である。だから異常心理学という言葉があるそうです。
そのときに、冒頭で挙げたような「心を休ませるには云々」のような、世間でもてはやされるたぐいのトピックは、それほど役に立たないのだなとわかります。それはいわば通常時のやり方なんだそう(自分の経験則として知っていましたが)
さらに、そういうひとと接して、周りがしんどくなるのも、周知の事実だと思います。
あまり公にならないことですけどね。言ってはいけない感すらあるんじゃないか。
そんな時に「仕方ない」とする=ケアされる側だけを優先するのでは、誰も幸せになりません。
そこに対して、双方が知っておいた方がいい、捉え方のコツのようなものがたくさん書かれています。
自分の状況に当てはまってずいぶん楽になった、と言うレビューが多い本として、ヒットしているようです。
私も同じように感じました。
あとは、私自身がケアされる側というのは前提として、もし誰か傷を負ったひとが、目の前で苦しんでいて、その人と関わることが必要なのだとしたら……心得ておきたいことがいっぱいあるなと思いました。
また、ひとと関わるということは。気持ちのやり取りをするということは。
優しさとか、思いやりとか、そういう「それっぽいもの」「正義っぽいもの」だけで行うことではない。そういうメッセージも受け取りました。
同氏の本は、語り口が優しくて読みやすいので、本をあまり読まない人にもおすすめです。
(挙げるなら『心はどこに消えた?』が愉快なエッセイなのでおすすめ。Amazonはこちら)
また、面白い本を紹介できるといいなと思います。