書評『know』

『know』野崎まど著、2013年(Amazonのリンクはこちら
情報化が進んだ近未来が舞台のSFです。主人公のイケメン男性と、ひとりの少女の話。

日本国民が電子葉と呼ばれるコンピュータを脳に埋め込み、誰もが考えるだけで情報にアクセスできる社会になって幾年。主人公はその中でも情報エリートと呼ばれる地位についています。
そんな時に恩師である天才科学者の残した暗号を手掛かりに、一人の少女と巡り合う主人公。
彼女は「量子葉」という、桁外れの演算能力を誇るマシンを脳に埋め込んだ、異能にも等しい少女だった……。主人公はそのマシンをめぐる陰謀に巻き込まれ、少女と逃避行をすることに。

今、あらすじを書いてすっかり気づいてしまったんですが、自分の作品(マンガに描いたやつ)は完全にこの作品からの着想でしたね……。
まぁそれはまたの機会に話すとして。

「量子葉」=量子コンピューターなのは、誰もが気づく仕掛けだと思います。
ヒロインの圧倒的な異能を、「量子コンピューターの演算能力」それだけで表現しているのがスカッとしました。科学賛歌っていうイメージ。テクノロジーの肯定。本当にこの作品からの影響だったんだな……。
もちろん、作中ではテクノロジーがもたらす負の側面についても描かれています。人間はどこまで超えていけるのか?

とはいえ、最終的に、神の領域に踏み込んでいく人間たちの姿が描かれるので、やはり肯定なんでしょう。
こういうテーマ、SFとしては振り切っているな。と感じるので、好きです。
人間など大いなる自然の一部にすぎず、分をわきまえるべきなんだ、という価値観には私は共感しません。

ライトノベル? というレビューも多いようで、物語としてはアニメ的、マンガ的とも言えるかも。
アクションシーンは映像をイメージしたほうが楽しめるような。でもあくまで小説なのがいい。

ラスト近く、主人公と14歳のヒロインが紡ぎだす関係性には、いいのか(笑)と思ってしまいました。好きですが……!(察してください!)
それも含めて、青春活劇といえる作品かも知れないですね。
そして綺麗なオチがつくわけじゃないのもSF的で趣が深いです。

また、面白い本をレビューできたらと思います。SF以外のジャンルも読むので、それも次の機会に。

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